山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

物事はみな流転し変容する

昨日、ロシアの写真専門サイトをウロウロしていたら。
「ん?コレは見覚えがあるわ」と知っている写真がアーカイブスに数葉ありました。
コレは知っている。
イリナ・イオネスコの1977年に発表した衝撃的な写真集「鏡の神殿(Temple aux miroirs)」からの数点ですがな。
この写真集は諸事情により、なかなか日本では全部の写真を見られない環境にあります(お察しください)が。
好事家の間では未だにこの写真集は高値で取引されている_つまり、そんな写真集です。

これは女流カメラマンのイリナ・イオネスコが自分の娘を5歳の頃からモデルとして使い。
バロック的というかゴシック的な。
シュールリアリスティクな芸風で、濃密で息苦しくなるようなセッションを繰り返したと思われる。その痕跡がありありと伺える…
当時からエロか芸術か??で論争を呼ぶ作品でありました。
(今、調べたらアメリカのアマゾンで418ドルで出てますね…)

イリナ・イオネスコは女性でありながら女性のヌードを撮るのが巧い(というと語弊があるような気も)写真家で。
独特の高い美意識と緊張感に貫かれた写真を撮る人なんですね。
その彼女が発見し、世界に向けて発表したのが自身の娘エヴァだった_ということなのですが。

その活動は写真だけに収まらず。
彼女の魅力をショーケース的に発表するかのような映画「思春の森」も制作されて。
エヴァ・イオネスコは瞬く間に「世界的なロリータアイコン」として君臨する事になりました。
当時の変態紳士はみな、彼女の面影に夢中になったよな気がします(ワシの妄想?)

イリナ・イオネスコはその後もカメラマンとして次々に作品を発表し。
ワシは「娘のエヴァはその後、どんな人生を送ったんだろう?」と漠然と思っていたのですが…

昨日、ググってビックリ。
フランスで女優になり(この話はなんとなく知ってた)カメラマンとしての作品も発表しつつ。
一番最近のニュースがコレでした↓
「児童ポルノ撮影された」、仏女優エヴァ・イオネスコさんが母親を提訴

当時、「この人子供なのにこんな事している!?」と非常にワシはビックリしたものでしたが…
彼女(エヴァ)は楽しそうに全裸になり、おおらかに大胆に厚化粧してポーズをとって、カメラの前で性行為すら見せていたので。
「ヨーロッパの子供、こえええええええ」
と思っていたのですが…

そうか。おとなになって。
「尊敬する人は母」という呪縛から逃れた時に、彼女の中に抑圧されてた思いがやっと解放されたんだな_という気がしました。
自分の普通の子供時代を自分の母親から奪われて消費される(未だに彼女の写真集は高値で世界中で取引されている)という仕打ちは。
「普通の幸せな子供時代を送りたかった」という彼女の叫びが聞こえてくるようです。

でも当時の写真は。
単なるロリータポルノグラフィーとして切り捨てられないものも沢山含まれているのことがこの問題の難しいところで…
単純に一刀両断に切り捨てることが出来ないのです。