山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「LOSTMAN GO TO YESTERDAY」レビュー その18

今朝、いつものように出勤前にNHK-BS2で「ちりとてちん」を見ていた(月曜?土曜の大切な日課)んですわ。
そしたらそこで、主人公の落語の師匠が主人公に向かって、「落語の面白さとは?」みたいな話を噛んで含めるように話す場面があって。
その台詞がやがて、自分が子供の頃に大好きだった死んだじいちゃんの言葉と重なるのですが、その台詞に曰く、
「おかしな人間が一生懸命に生きている姿は、本当に面白い」
って言うんですね。

思わず、「ハタ!」と膝を打ち、夫に向かって、
「ああ、ワシがピロウズを好きな理由もまさにコレよ!!」と断言してしまいました。
いや、もう、本当にこの一語に尽きる。
「自分とよく似た、少しおかしな所を持つ人間達が、一生懸命にナニかをやっている。『オレたちは今、生きてて、ココでこうしているぜ!』と、全身で叫んでいる。その姿を見つめることの面白さ」というのが、実はあるんですね。

ギターの真鍋さんが今年初夏のインタビュー(「音楽と人」6月号)で、
「普通、ロックバンドというのはエンタテイメントじゃないですか?でもピロウズってドキュメンタリーなんですよね。『これからこの先、どうなっちゃうの?』と思って(誰にもこの先が判らない物語を)自分の事なのに、見ている感覚。でも後悔はドコにも無いんだよね」
と語っていて、「巧い事言うなー」と感心していたのですが。

なんせ、空前絶後の「前例のない存在のロックバンド」なので(とにかく多作で活動も活発。仕事中毒としか思えないその仕事っぷり)ワシはいつも、この「ピロウズという物語」を最前列でポップコーン片手に見ている感覚に陥るんですよ。
で、時々はこの「誰にもこの先の筋書きが判らない物語」にエキストラとして参加したり(つまり、ライヴに参戦しているって事)しているのですが。

「いやー、ホントに面白いわ!」
よく、思います。
先日長女からも言われました。
「お母さん、俺たち、バスターズになってなかったら、今頃全然違う人生だったよね?今が物凄く楽しくてヨカッタ!!」とね。

この「LOSTMAN GO TO YESTERDAY」はその物語の「最大の過渡期」を刻んだ物件です。
それまで自分しか見つめていなかった一人のクリエイターが、自分の中をより深く見つめる事で、初めて自分と相対する者(メンバーやファン)にも目が向いて。
そして表現の幅と深さを広げていく。
その軌跡が残されているのです。