山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

11月は逢魔が月 その9

さて、そうやって一旦、電話を切ったものの、どうも話しが変だ。
あの潔癖症不潔恐怖症の義弟がホームレスに?まさか!?
あの自分の命より大事な宝物一式を家に置き去りにして??まさか、そんな事が起きる訳が無い!!
もし、本当に家の中に義弟の姿が無いのだとしたら、どっか他所に死に場所を求めて外に出たという事か??

色々考えても答えは出ないが、どうしても考えてしまう。
「なんとも落ち着かないものだなあ…」とオロオロしていたら、それから40分ほどしてダンナからまた電話。

「弟の死体を見つけた。今、警察が検死作業をしている」との事。
「何処で死んでいたの?」と聞くと、
「風呂場」との事。

…ワシなら真っ先に風呂場と押し入れを開けるけどなあ(死体がとりあえず見渡せる場所に見当たらなかった場合)
しかし、この場合、ダンナが一人で死体を発見したのかどうかが一番気になるので、
「一人で見つけたの?」と聞くと、
「ガスが止められている様子だったので、Nさんに電話しながらガス台の前まで歩いて来て、風呂場のドアに目をやったら、ぶら下がっていた…」とダンナ。

ワシが一番恐れていた事が現実に起きてしまった…
でもワシは夕べから何度も何度も言ったのに、
「一人で死体を見つけるような事をしないで」と言ったのに。
ダンナの心はソレを聞くのを拒否していたのだから、こうなっちゃう事は仕方ない結果といえばその通りなんだが…。

しかし、ダンナはコレで本当に天涯孤独の身の上となってしまった。可哀想に。
ここでワシが恐れていたのは、「ダンナの心が壊れやしないか」と言う事だったのだが、電話でのダンナは気丈であった。
ワシだったら、失神してそのまま入院でもしたほうがどれほどラクかと思えるのだが、ダンナはシャキシャキと現場の作業をこなし、立ち働いている様子だった。

忙しそうにしているので、一旦電話を切り、アチコチに電話。
まず実家に電話して、「やっぱり義弟は死んでいた。応援頼む」とSOSコール。
次に明後日の午後に我が家に来る事になっていた税理士さんに予約変更の電話したが、留守電になっていた。
ので、そこに「すいません、緊急事態です。義弟が自殺しました。明後日は帳簿を見て貰う事が出来ません」と吹き込んでおいた。

するとものの30分で税理士さんからコールバック。
「じゃあ今すぐ伺います!」とお休みの所、僻地の我が家まで急きょ出向いてくださった。