山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

11月は逢魔が月 その12

そしてダンナがこんな事を言う。
「今朝、ミカボが持たせてくれたものが全部、役に立ったよ」
まず、ワシが自分のヘソクリから「何かあるといけないから」とダンナに3万7千円を渡していた(ワシの虎の子ー!)
他には、ガラドリエルになって渡した「ウチの井戸水」(別名「命の水」)、タオル、ティッシュなど。

ダンナは義弟の遺体発見後、物凄い恐怖の叫び声を上げ続け、団地の人に通報されたのは前述の通りであるが、同時に物凄い分量の汗を全身から振り絞ったらしい。
で、警官到着後、「ウチの井戸水」(別名「命の水」)を思い出し、ゴクゴクと飲んで落ち着き、検死作業を見守っていたら、死亡診断書に結構お金がかかって、検死作業後、印鑑を持っていなかったので警察に母印をとられ、ソレをヌグヌグとワシが持たせたティッシュでぬぐいとり、高速代やらと合わせて丁度持って行ってたワシの虎の子3万7千円をキッチリと使い切ったらしい。

「で、さっきから家の中の色んなものをゴミ出ししてたんだけど、階段の往復だけで物凄い汗で、ミカボが持たせてくれたタオルで汗をぬぐってます」とダンナ、言う。
うーむ、ガラドリエルさまの予見能力は恐ろしいほどことごとく当たるのだなあ<ヒトゴト

「今夜は眠れそうかい?」と聞くと、
「いや、とにかく家の中の、弟が溜め込んでいる荷物が凄過ぎて、明日朝が丁度ごみの日なのでついでにゴミをまとめて出しちゃおうと思っている」と、ダンナ言う。
「まあ、眠れそうにない時は眠らないのが一番か。どうせ疲れ過ぎたら嫌でも気を失うようにして眠れるものだし」とワシも思い、
「適当に頑張って。その家の片づけは、どうせプロの業者さんにでもお願いしないといけないようになるだろうし」と言って電話を切る。

・11月3日
朝から両親の車に同乗し、子供たちも一緒に義弟宅近くの葬祭場に行く。
するとまだ義弟の遺体は到着してない。
「どうせ近所だから」と子供たちを両親に預け、そのまま歩いて義弟宅へ様子を見に行った。
すると丁度、葬儀社の人たちが遺体の搬出作業をしている現場で、90キロ超の義弟の遺体を苦労しながら団地の5階から下ろそうとしている現場であった。

ダンナは急にワシが現れたので、「アレ?」とか言っている。
忙し過ぎているせいか、思いの外、ダンナは元気そうだった。