山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

先祖伝来の味?

友人と話していたら、「葬式の料理」の話になった。
彼女はもともと、この半島のヒトではない(佐賀から嫁に来た)ので、初めてコチラの親戚の葬式に参加した時に「とろみのあるお吸い物」が出てオドロイタと言うのだ。
「初めて食べてビックリしたの。でも、葬式と言えば、コチラではソレが必ず出るのよね」と、彼女。

・・・・ワシ、知らない。
何でも「普通のお澄ましに千切り野菜が入っていて、片栗粉でとろみをつけた物」らしいのだが。
「食べたことナイ、ソレ」とワシ、言う。
多分、精進料理の仲間(?)なのだろう・・・・

で、思い出した。
実家の父の生家がある地方では、「葬式にしか出ない料理」というのがあったのだ。
え??ソレは「薄揚げとゆで卵を醤油で甘辛く炊いたモノ」と「ご汁(じる)」の取り合わせ。
何故か、この組み合わせで出てくるのは「葬式限定」である。

・・・という話をしたら友人が言った。
「ご汁ってナニ?」
え!?ご汁って熊本限定の食べ物だっけか??大分県でも見たわよ。
一村一品」の直営ショップでも、フリーズドライの「ご汁の素」を売っていたわよ(ワシは買って帰ったし)

★ここで解説=「ご汁」とは、一晩水でふやかした乾燥大豆を水ごとそのままフードプロセッサーにかけて(昔はすり鉢&すりこぎで)ドロドロにしたものでつくる「みそ汁」の一種。具は千切りの薄揚げ、豆腐、大根、人参、インゲンなどなど。とっても「ヘルシー♪」な食べ物でワシは好き。

まあ、かつて昔、山奥(!)の葬式で出ていた料理だが、コレがナカナカ美味い。
ワシのダンナはワシと結婚して、この料理に初めて触れて以来コレが大好物となり、実家の父方の葬式があると、「妙に嬉しそう」だ(←不謹慎)

地味で素朴な「山里の精進料理」だが、最近は葬儀も葬祭会社任せなので、メッキリこの料理を食べる機会も無くなった。
20年くらい前までは近所の女衆が集まって竈に火を入れ、直径1mもあるお釜で煮炊きをして、客人や家族にこの精進料理を振る舞ったものだったが。

もう、山から薪を採ってきて竈にくべるなんて事しない。大きなお釜も冬眠状態。
多分、親戚の葬式で、あの料理に出会うことはないだろう。
だからコッソリ「葬式限定」のメニューを普段の食事にワシは作る。
ダンナは「ああ、大田黒(父の生家のある地名)の料理だね」と嬉しがる。
コレがウチの「伝来の味」になるのかもしれない。