山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「新・平家物語」の舞台裏

あの木暮実千代の「イブニングドレスみたいな袿姿」(打ち掛け一枚の下は袴をハイウエストに履いて、乳首ぎりぎりのところで蝶結びにして締めている姿)は、「史実に基づけばおっぱい丸出しだったんだろうなあ」と思いつつ見てました。
確か、古語辞典の資料のページで、夏の十二単姿のイラストが、袴の上はおっぱい丸出しで「うーん開放的」(゜_゜)と思って見た覚えがありますもん。

あと、花輪和一の漫画でも平安時代を舞台にしたのだと身も蓋もない姫君たちのおっぱい丸出し袴姿を書いてあったようなw

おそらくはこの「新・平家物語」の映画化では、映倫の問題があって。あの袴の履き方のスタイルになったんだろうな…と思いつつ見てましたw
ところがこの異様な(ごめん)着こなしのせいで、木暮実千代が俄然モダンに、ヨーロッパの女優みたいに見えるんですよね。
「怪我の功名」?(^_^;)とでも言うのか。
溝口健二の美意識の底力を見る思いでした。

それと、ラストのほうで、雷様清盛が甲冑姿で僧兵どもと対峙するシーンがあるのですが。
そこで着ている甲冑が、「これぞ日本の鎧!」みたいな。目にも鮮やかな見事な色、形のものでして。

「きっとこれは資料を集めて徹底的に史実に忠実に作った鎧なんだろうなあ」
と思って見てたら。
やはり日本最古の鎧が現存する瀬戸内海の離島の神社にまで美術班が出かけてって調査しまくり、源頼朝が平安末期に奉納した鎧をモデルに職人さんに作らせたようですね。

…それでもやっぱり、「鎧の実戦で使った感じ」を出すために、職人さんが心血注いで作った新品の美しい鎧を溝口監督は、「こうですよ!」と言いつつ鉈で鎧の脇腹をガッツンガッツン叩いて傷を入れて回ったそうです(ソレを間近で見てしまった職人さんは泣いたらしい)

さすが、鬼。
地獄に落ちたこと1ミリの疑いも間違いもなしの溝口健二監督!(褒めてます)

雷様の体つきが華奢なので「牛肉を食べなさい!」と強制したり、僧兵役の俳優は全員、本当に丸剃りの刑だった話(でも衣装をつけて実際に現場に立ってみて、イメージが合わなければ、その場で即、クビだったらしい)
色々と撮影中もエピソードに事欠かなかったようであります。

※調べてみたら、件の鎧は1955年当時「80万円」だったそうです。
1955年の大学卒初任給は「8700円」でしたから…まあ、お察しw