山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「雨月物語」溝口健二

BSで宮川一夫(通称ゴッド宮川)の特集をやっていたので、久しぶりに再見いたしました。

大分前に見たことがありましたが、今回はデジタルリマスター版ですよ。
それのおかげで、今回、目から鱗が落ちました!w
ようやくこの映画の本質に触れられた思いです。

是非、この映画は皆さんにもデジタルリマスター版で見ていただきたいですね。

コレは有名な上田秋成の物語をベースにした。戦国時代、普通に暮らしていた二組の夫婦が運命に翻弄されて別れ別れになり、それぞれに辛苦を味わいながら元の生活に戻る…
という「死と再生の物語」なワケですが。

まず、普段の主人公(市井の陶工)の生活が非常によく描けている(どれだけ上薬掛けのシーンの練習をしたのか偲ばれます)ので、戦に巻き込まれて日常が破られるシーンが凄い。

この溝口監督、実はアクションシーンを撮らせても超一級の腕前なんですが。
その手腕が遺憾なく発揮されます。
夫と別れた後、雑兵にレイプされる妻。
このシーンの物凄いこと。
俳優がカメラの前で命のやりとりをするような迫力です。
きっと、溝口監督はこんな時も、「反射して下さい」の一言で、あとはだんまりだったんでしょうなあ…凄いSです(ごくっ)

子供を背負った田中絹代が、雑兵におにぎりを奪われるシーンも圧巻。
子供を背負ったまま、雑兵にむしゃぶりつき、突き飛ばされ、転がされ、クルクルと風に舞う木の葉のように草原で翻弄されるシーン。
ココも凄い。
しかも、ココで田中絹代が着ている辻が花の着物も凄い。
さりげない、地味な着物ですが、凄くセンスが良いんですよ。

人ならざる美しさを全身からみなぎらせている京マチ子の凄絶な美しさ。
実はこの御殿の姫君の京マチ子も、自分の妻である田中絹代も、「この世に無念を残している女である」という表裏一体の存在なんですね。
「女」というものを常に見事な筆致で描き続けた溝口監督ならではの手口wです。
ここも物凄く面白かった!

廃屋が一瞬にして暖かな我が家に転化する映像の魔法(横で見ていた11歳の次女が、「今、ナニが起きたー!?」と驚愕しておりました)

見所沢山、一瞬の目の休憩も許さぬ「映画の魔法」の連続技に目がすっかりグルメ状態になり申した。