山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「ノスタルジア」(1983年 アンドレイ・タルコフスキー監督)

GyaOにてタルコフスキーの「ノスタルジア」を無料配信やってますよ!5月31日までです。
急いで見るのよ、レッツラゴー(●^曲^●)ノ↓

ノスタルジア

自殺したロシアの作曲家の取材のためにモスクワからイタリアに旅行に来ている作家アンドレイ・ゴルチャコフは、温泉の街バーニョ・ヴィニョーニで老人ドメニコに出会う。
ドメニコは世界の終末を信じ、7年間にもわたって家族を幽閉したため周囲からは奇異な目で見られていた。
彼はアンドレイに「ロウソクに火を灯し、それを消すことなく温泉の広場の端から端まで渡れたら、世界が救済される」と言い残し、ローマに発つ。
マルクス・アウレリウス像の下で人々に目を覚ませとアジテーションを行ったドメニコは人々の見守る中で焼身自殺。その頃、アンドレイはドメニコの言葉通り、ロウソクに火を灯し温泉を歩き出していた……。

キャスト
出演:オレーグ・ヤンコフスキー エルランド・ヨセフソン ドミツィアナ・ジョルダーノ
スタッフ
監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
再生時間
02:05:38
配信期間
2019年5月1日(水) 00:00 〜 2019年5月31日(金) 23:59


この映画20年ぶりくらいに見たんですけど、やっぱりびっくりするぐらいきれいな映画で。
昔見た時は、「悲しい残酷な話だなあ」と思ったのですが、今はw
「そんなに亡命したのが嫌だったんかい!!しょうがない人だなあ」ですた←

まあ時代的にも作品的にも「ストーカー」と遺作になった「サクリファイス」を繋ぐもの_的な立ち位置にある映画に見えます。
この「ノスタルジア」の主人公はほぼ、タルコフスキー本人ですしね。
故郷への郷愁、残した子供に対する思い、ほぼ自己愛とも呼べるような自分の思い出に耽溺することしかしない主人公、それでも自分を犠牲にしてでもなお、何かを救い求めようとしている。
映画のあちこちに「天使」のモチーフが現れ、その天使は何かを告げに来たような気配もあって、なんともしれん不安な気持ちにさせられます(何故か)

ちょっとした風向きですぐに立ち消えてしまう小さなろうそくの微かな灯り。
それを必死に守りながら、お告げに従い、そろりそろりと水が抜かれた温泉の古い石造りのプールの底を移動する主人公。

「行き先はこの小石が教えてくれる」と紐をつけた小石を投げながらゾーン(危険地帯)の中を移動していった「ストーカー」の登場人物たちを思い起こさせられます。
子供じみた、でも必死のその行動はまるで「祈り」にも似て。
「不気味なインテリ!」と罵られる主人公の純粋さ、必死さ、その内側にある強い思いが伺えて。
そしてそれから連なるラストシーンはまさに「美の暴力」ですよ。
静謐でやたら力強い美の表現。
やはり、タルコフスキーは唯一無二の映画監督です。