山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

フェチ?まだ「軽蔑」の事

しかも、このゴダール、女優を綺麗な死体に仕立てるのが巧いんですな。
以前もゴダールの映画で最後、主人公の女優が拳銃で撃たれて「ぱったり」と、満開の花がそのウテナから突然理不尽な力でもぎ取られて地上に落ちるかのように、あっさりと死んで見せるシーンが衝撃で(「彼女について私が知っている二・三の事柄」でだったっけ??)
「うわ、なんだコレ!?」とビックリしたんですが。
この「軽蔑」でも同様ですね。

この別荘の海辺のシーンでBBがガウンを脱ぎ捨てて全裸で海で泳ぐシーンが映画の最後の方近くであるのですが、この時、BBの顔を見せないんですよ。
後ろ姿だけ。
スタンドインじゃなくて、その見事なプロポーションからもBB本人が全裸で泳いでいるって十分わかるシーンなのですが。
まあ、普通、女優は「顔が生命」ですから見せますわな。
ましてや夫を振りきっての重要なシーンなので、彼女が一体どんな表情なのか?を、普通の映画だったら見せるんですよ。

でも、見せないゴダール
このシーンの意味は衝撃のラストで氷解します。
(以下ネタバレ)

このBB演じる脚本家の妻は夫に愛想を尽かして、夫が滞在している別荘から出ていくのですが、その彼女を待っていたのは残酷な運命でした。
タンクローリーと激突しての交通事故死。

そこでゴダールが見せるのは「美しいBBの事故死体」なんですよ。
満開の花が、その盛りで突然、理不尽な運命の力でもぎ取られて地上に落ちるかのように…

って、<B>あるぇー?</B>

後ろ姿だけの美しい死体。
でも、スタンドインじゃなくて、その見事なプロポーションからもBB本人が死体を演じているって十分わかるシーンなのですが…

って、<B>あるぇー?</B>

つまり、あの「全裸で海水浴」のシーンは、この衝撃のラストの伏線だったんですね。
そしてこの瞬間にワシはこの映画の趣旨も理解しました。

「そうかBBは女の象徴であり、愛の神殿に仕える巫女だったのだ」と。
あの象徴的な建築の別荘のデザインはまさに「神殿」じゃないですか。
海に向かいスッと天空に伸びる巨大な階段を主体にして作られたようなデザイン。
なんだ、なんて分かりやすい映画なんだ。
なのに、ワシは50歳になって再見するまで気がつかなかったなんてw

それにしても綺麗な死体すぎです、ゴダール
フェチですか?