山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「色、戒」考察

「ラスト、コーション」(クリック注意 「浅ましいシーン」の写真あり)のお話をもうちょっと。
アレは、性愛シーンが多い割には色気少なめでして。
「なんでだろうな??」と自分で首をひねって考えていたのですがなんとなく理由がわかった気がするので、忘れないうちにφ(*'д'* )メモメモしておきますね。

まず、トニー・レオンがヒロインと身長差が殆ど無いんですね。
「コレはどういうことだろう?」と最初、監督の意図がわからなくて首をひねったのですが。

その身長差がない二人が、ふたりとも細身で全裸晒してギッシギッシとまぐわうのですが。
なんか寂しいっつーか。「人間て浅ましいな」という印象を抱かせるのはいかがなものか?と思ってたのですが。

最初、トニー・レオンがSっぷりを発揮してヒロインを手荒に扱うのですが、意味がわからなくて。
「なにジタバタしてんだ?」と思ったほどで。
ヒロインの下履きを破る行為に及んだ段階でやっと「あ、コレは」と気がついて(遅)
そして思ったのは、「コレはトニー・レオンが可哀想だなあ」という事でした。

そもそもトニー・レオンてそんなキャラじゃないし。眉毛いつも八の字だし。
とか思ってたら。やはりこの撮影は負担だったみたいで、この後なかなか立ち直れなくて?激痩せして映画の撮影に入れないくらい憔悴しきってたらしいですね。

ヒロインが貧乳。身長差が無い。ふたりとも細身。
このふたりがまぐわうって事は、実は「二人の間に差がない」って事なんですよね。
力関係も差がある(日本に協力している政府の有力者VS身分を偽ってブルジョア夫人になりすました女子大生)はずなのに、実は二人は対等であるって事なんですよね。

愛のコリーダ」の時はどうだったけなあ?と記憶のひだをかきわけかきわけしてみると。
アレは…なんか演技の稚拙さとかミニチンコとかいろんなことを乗り越えて、ある種、恋愛の陶酔があったというか。
美しく熟成された感じがあって。
実際、見てみると「良い映画だな」と思わせるものがありました。

つまり方向性がぜんぜん違うんですな。
ラスト、コーション」の「ラスト」は「Last」じゃなくて「Lust」(渇望、色欲みたいな意味)でして。
原題は「色、戒」なんですよね。

この映画のテーマは「裸になったら皆同じ」て事と。
「色欲に溺れて身を滅ぼす」て事で。
だから、問題の18禁のベッドシーンにおいてすら、ようやく「あ、いいな」と思わせるのが、トニー・レオンが女に責められて乙女のようにアフンアフンとあえぐシーンだけってことなんです。
ここでようやく、アン・リー監督のキャスティングの意図が理解できたんですね。

でもってこの映画で一番色っぽいシーンはどこか?と言うと、お金持ちのマダムたちがお互いの腹を探りあいしながら麻雀を打つシーンなんですなw
色々ありますが、さすがのアン・リー御大。
素晴らしい映画であることには間違いありません。