山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

サム・ライミを語る6

まさか、こんなに続くとは思わなかった(自分でも)サム・ライミ話し。
まだ今日も続きます。
ちょっとつき合え。

さてその「シンプル・プラン」その物語はこんな感じ↓
出来の良い弟(ちゃんと農業資材店に就職して美人な妻と結婚し、もうすぐ子供も生まれる)とダメニンゲンな兄が暮らすアメリカ北西部の田舎。
そこで偶然(借金を苦に自殺した両親の墓参りに出向く途中)、山の中に墜落した飛行機を発見するのだが、そこには死んだパイロットと大金が積まれていた。
どうやらこれは犯罪絡みのお金なようで、猫ババしても良いような気配?
主人公(出来の良い弟)の妻が提案する。
「コレは私たちのものにするのよ。みんなで分け合って、しばらくは大人しくして、なりを潜めておく。そしていずれ自由に使うようにすればいいわ。なんて簡単な計画(シンプル・プラン)なのかしら」
そこから、貧しいが平穏な生活を営んでいた者たちの運命が反転してゆくのだ。

ここで面白いのが、この美しい妊娠中の妻(ブリジッド・フォンダ<ピーター・フォンダの娘。美人なのにライミ作品の常連)がなんとも言い知れぬ悪女ぶりを発揮する事だ。
自分の手は何一つ汚さずに、男達の運命を翻弄し、皆を破滅へと導いて行く。
その菩薩の表情で、母の優しさでもって。

なんとも恐ろしい…。
いや、もともとホラー映画の出身な監督なんだから、「恐ろしい映画を作る」のは極く当然のことなんだけど、血しぶきも出ない、ショック映像も無いこの映画に何とも恐ろしい空気を導入して見せている。
「現代の魔女物語」とワシは勝手にこの映画を位置づけている(それこそ「ブレア・ウィッチ?」に比べたら恐ろしい映画だよコレは!「普通に生きている。良心的な人間こそが恐ろしい」というのを描いて見せたんだから)

しかも同時に描いて見せたのが、誰も注目しないような(失礼)田舎の貧しい白人の貧しい暮らし。
誰にも相手にされず、誰からも振り返りもされず、孤独に悲しく生きてゆくしか無い生活をせざるを得ない人々に向けるこの優しい視線。
「本当に心が美しいのは誰か?」「人間にとってイチバン大事なものは何か?」をコンコンと描いて見せたこの「シンプル・プラン」こそは、ライミが「オオバケする瞬間」であったのだ。

多分、ライミ監督自身もそういう最低白人の生活をよく知り、その人たちにシンパシーを思って生きてきた人なのだろう。
あ、また字数がry