山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

映画覚え書き「女と三悪人」☆=4

井上梅次の脚本が素敵な作品。
いわゆる群像劇なのだが、どっちかというとそのセリフ回しなどはハードボイルド調で、
歯が浮くような気障なセリフを美男美女が次々に繰り出してくるので、最初は面食らうが、
なんともお洒落なので、繰り返し聞くそのウチにウットリしてくるという仕掛けになっている。
調べたら1962年作品だそうで。カラーも綺麗だし、声が甲高い中村玉緒タンも愛らしい。
モブシーンが豪華で、何処を見ても人がぎっしり(それもリアルにありとあらゆる年齢
職業の通行人が居る!)で、正に、眼福。
セットも素晴らしく、夜景の遠景のショットなど「これぞ大映京都撮影所の底力!」という
感じ。
本当にこの職人ワザは素晴らしい。

その数多行き交う通行人の中に、ぽっかりと浮かび上がる真昼の月のように、「ザ・美女」
山本富士子と、「ザ・美形」の市川雷蔵の顔が浮かび上がるんですよ!
その人並外れた容姿故に、無理矢理にというか、どうやってでも「人の群れから浮かび上
がってくる」んですよ、顔が!
この有無を言わせぬ「人並ならざる美しさゆえ、他に選択の余地無く俳優になりました」
みたいな存在感がね。もうスゴイ。
今の俳優でこの感じあるかなあ?
こんだけのモブシーンでも否が応でも顔が浮かび上がってしまって、目立って目立って仕方ない!
みたいな人、いるかしら?とちょっと考え込んでしまった。

で、またこの「天下の美男美女」がですね、お互いの芸を披露し合い、ぶつかり合い、火花を
散らすんですよ。
スゴイスゴイ。本当に眼福映画ですね、コレは。

雷さまは弁天小僧になって見せるし(もう江戸の娘達がキャーキャー大騒ぎします_今で
言えば「腐女子萌え」ですな。天下の美形の女装で「萌えー!」ですから)、
ミス・フジコヤマモトも男装もするし娘道成寺もやってくれる。
そしてその合間合間に、二人で超カッチョイイ科白の応酬なんかもやってくれる。
嬉しくなって、「ヒー♪」ですよ。

実は今まで井上梅次って「そんなに大した事、ナイなあ」位にしか考えていなかった監督ですが、
悪かった(土下座)
ワシが、悪かった!!(力説)

いや、ワシが土下座しても痛くも痒くもないだろうけど(立ち上がって膝をパンパン☆)
面白かったですよ。プログラム・ピクチャーも舐めたもんじゃないですな<エラソー