山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「LAMB」

アマプラで配信してたので、見てみました。

去年、結構話題になったアイスランド映画「LAMB」です。

予告編を見る限り、ホラーっぽい印象ですが、実際に見てみると微妙に印象が違います。

 

舞台はアイスランド大自然の中。羊を飼って暮らしている夫婦の物語です。

二人は静かに羊を飼って暮らしていますが、この夫婦には悲しい歴史もあります。

たった一人の娘「アダ」を亡くしているのです。

ある時、羊の出産に立ち会うと、ある羊が半羊半人間の生き物を生み出します。

困惑する夫婦。

しかし、夫婦はその子羊に「アダ」という名前をつけて、服を着せて乳を与え。我が子同様に慈しみ育ててゆきます。

そのうちにその「アダ」は順調に育っていき、普通に両親に愛されている娘として成長してゆきます。

そしてその家に「おじさん」が入ってくることで、この幸せに変化が訪れます。

 

なんというか。

ブラックコメディにしては物語が繊細すぎる。

ホラーにしては優しすぎる。

そんな映画です。

 

母性とか女性というものの狂気、その証明を見た気がしました。

映画の雰囲気はとにかく、静謐で美しく、アイスランド大自然に心を奪われます。

フィヨルドが削り出す荒々しくも美しい山並みと海。

静かに佇み神秘的な雲をまとう高い山。その裾野に広がる草原と波のように押し寄せる羊たち。

「なるほどこんな風景の中だったらこんな事が起きても許す」という気持ちになります。

 

物語の語り口がとても神話的というか民話的で。

「あ。これは取り替え子の話か」と見ている途中で気が付きました。

 

ja.wikipedia.org

 

「アダ」の産みの母である雌羊が、我が子の様子が気になって羊飼いの家の中の様子をストーキングするのがなんとも切なく悲しいのです。

ここで対峙する雌羊と羊飼いの奥さん。

このシーンはたしかにホラーを感じました。

 

「お互いどっちが本物の母親なのかここで勝負したろうやないか」という気迫を感じました(このシーンで母VS母の名シーン、「エイリアン2」風味を感じた)

しかし、物語全編に漂う、厳しい大自然の中で展開する気高くも美しい世界観には、

「あ。ラース・フォン・トリアーの『奇跡の海』を思い出しちゃった」りしたのでした。

 

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