山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

夕顔の三枚の絵

よく、「昭和の頃の日本人は、真夏になると上半身裸で平気で人前に出ていた」みたいな話を耳にします。

そのたびにワシは思うのです。

「うちの近所の婆さんとか、平成も10年頃まで真夏になると夕方は上半身裸で外に出て家庭菜園の手入れとかしてましたで」

おそらくは日本人は割とつい最近まで、女性の乳房が性的なものとしてあまり捉えられてなかったのではないか??と思う理由の一つであります。

 

かく言うワシも…

実は赤ん坊の授乳期には、割と人前で堂々と授乳してましたもんな(もちろん、盛大に開陳してたわけではなく、上着の影とかテーブルの下に赤ん坊を抱えて隠しながらの授乳_ではありましたが)

初号機も弐号機も母乳で育ててたので、外出にミルクセットとか持っていかなかったせいもあるでしょうけど。

母乳育児だと、色々と圧倒的に「楽」なんですよ。

起き上がってミルクを作って冷ましたり、飲ませたあとに抱っこしてゲップをさせなきゃとかの面倒くさい作業が一切なくなるので。

 

まあ、母乳を与えている時代というのは、本当に幸せな記憶でありまして。

そんな幸せの原風景を見つける絵をご紹介しておきましょうね↓

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※「納涼図屏風」(17世紀 国宝)久隅守景筆

夏の夜、浮かぶ満月に照らされた夕顔棚の下の親子三人の姿が。

「まさにこの世に天国はあるのだ」と教えられる気がしますよ。

お父ちゃんも砕けた姿で、お母ちゃんも腰巻き一つで、子供も片肌脱いで、夏の夜を楽しんでいる図でございます。

 

そしてワシはある日、この絵をテレビ?かなんかで見てて見つけてしまって。

「あらまあ」

と思うわけです↓

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※「夕顔棚納涼図」(19世紀前半 メトロポリタン美術館蔵) 歌川豊広

こちらはまだ子供のいない夫婦でしょうか?

夕顔の花の下で盛大に前をはだけて(;^ω^)夕涼みしている姿が描かれております。

もちろんコレは一番上の「納涼図屏風」にリスペクトし、インスパイアされた絵であることは明確ですよね。

 

そして更に時代は下り。

ワシの好きな月岡芳年も同じテーマに取り組んだことが、この絵で知れるわけです↓

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※「月百姿 たのしみは夕顔たなのゆふ涼 男はててらめ女はふたのして」(明治23年 1890年)月岡芳年

※※歌川豊広の「夕顔棚納涼図」から50年後?の作品になります

コレは月岡芳年の「月百姿」という月が描かれた浮世絵のシリーズの中の一作品で、もちろん、これも「納涼図屏風」への返歌とでも言うべき作品なんですね。

ここでは奥さんはつましく、後ろを向いて赤ん坊に乳を与えております。

つまりこの50年の間に起きたのは、明治維新_てことでいいのかな?