山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「バベットの晩餐会」

GYAOでHDリマスター版が配信されてたので、久しぶりに見ましたの。

映画「バベットの晩餐会」(1987年 デンマーク ガブリエル・アクセル監督)

日本公開当時、映画館で見たんですけどね。

当時はミニシアターというものがあって、海外の優れた作品を公開してくれてたものです(今はほぼ失われた商売のやり方)

 

物語はパリ・コミューンから身一つで逃げてきた女性を、教会を切り盛りする姉妹が引き受けることから動き始めます。

パリで夫と子をなくしたというこの女性は貧しく寒々しいユトランド半島の漁村で姉妹に仕え、家政婦として黙々と仕事をこなしてゆきます。

もともとこの姉妹は若い頃から牧師である父を支え、敬虔な教徒として信者たちと教会のために生きてきて、そのまま年老いた二人でした。

若い頃はそれなりにロマンスもあり、姉は軍人と、妹はパリの人気歌手とそれぞれにほのかな思いを交わすのですが、その恋が実ることはないまま老女になったのです。しかし、この経験がこの物語を引き起こすのです。

パリからやって来た女性はバベットという名で、唯一、生まれ故郷のフランスとつながっているのは「フランスの宝くじを買う」という行為によってのみ、でした。

ところがある日、この宝くじが大当たり、バベットに大金が転がり込みます。

年老いた姉妹は「これでバベットがパリに戻れる」とバベットとの別れを覚悟するのですが、バベットは「お父様の生誕100周年を祝う晩餐会を私に任せてください」と言い出します…

若い頃はコレを見ても、「なんなんだこの話は、北欧の人ってつましい生活で貧乏に暮らしていたのね…ここまで禁欲的に生きるとか日本人には無理かも」

くらいしか思いませんでしたがw

年を取るのは素敵ですね。

この物語の芯の部分がとてもよく理解できて、しかも感動しました。

 

いわゆる「人情噺」みたいなストーリーなのですが、ほのぼのとしたおかしみとユーモアを漂わせながら話が進むので、見てて楽しいですね。

そして人生で起きたちょっとしたことで、その後の人生に影響が出てくる。

変化が訪れて、宝物のような気持ちを受け取ることもある。

そんなことを感じて、感動しました。

将軍の最後のセリフとか、若い頃見ても「そんなこと言っても現実はそうじゃないじゃん」とか思ってたんですけどねw

60歳の今は「そうだよ、そんなこともあるよ」とさめざめと感動の涙を流したのでした。

初見から33年も経てば人生の色んなことがわかってきて、作品への理解が深まるってことなのか、それとも単に、加齢で涙もろくなっているってことなのか(;^ω^)