山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

薔薇の葬列

体調も良くないし、「なんか気になってた映画でも見てみるか」って事で、見てみましたこの映画↓
薔薇の葬列」(1969年 松本俊夫監督 ピーター主演)

公開当時すごくスキャンダラスで話題になってた事は覚えております。
この映画以降、ピーターはテレビの人気者になってレコード出したりバラエティに出たりしてましたな。
(今は福岡ローカルの情報番組でコメンテーターとかしててよく見かけます)

映画の物語はギリシャ悲劇をモチーフにしておりまして。
場所は新宿・花の東京。
50年前から東京はTOKYOバビロンだったっつー証言映画になっております(イミフ)

新宿のゲイバー「ジュネ」ではママのレダ(和装)と売出し中のゲイボーイ・エディー(コレがピーター16歳ちょっと安室奈美恵風)の熾烈な女の戦いが花火を散らしております。
お金(どっちがお店のナンバーワンか?)と愛情(店のオーナー男の)をめぐって二人の戦いはつかみ合いの喧嘩にまで発展します。

お店の外は学生のデモ隊、ハイレッド・センターみたいな前衛芸術小僧が右往左往してて。
不良外人や麻薬の売人、自主映画撮っているフーテンたちにズベ公たちとまさに地獄。
その中をほぼ子供(化粧を落とすとあどけない顔が出てくる)なピーターが、マリファナ吸ってビール飲んで、フーテンたちと乱交したりします。
とんでもない話ですw



映画の最後の方に出てくるこの↑ピーターのスタイリングが実に時代をよく表してて感心しました。
当時の空気感てまさにこんな感じでしたよ。
サイケと古代ギリシャが混ざり合った感じ。祝祭と聖なるものと卑俗なるものの融合。
このスタイリングを見て、「あ。この映画はギリシャ悲劇がモチーフなんだ」と気がつく仕掛けになっております。



映画中でもパゾリーニの映画のポスター(「アポロンの地獄」1967年)の前でポーズを取るシーンが出てくる↑のですが。
なるほど、パゾリーニギリシャ悲劇をモチーフにした映画を何本か撮ってましたな。
この「アポロンの地獄」はオイディプス王をモチーフにしてたはず。シルバーナ・マンガーナが出てたのを子供時代に見た記憶があります。
「あ。この映画はパゾリーニワナビーか」
と気がつく瞬間です。
薔薇の葬列」もオイディプス王の物語をアレンジしたものですしね。
日本からイタリアのパゾリーニへの強烈なラブレターと見ることが出来そうです。

予定された悲劇はそのままに完遂され、あまりにも悲惨なお話ゆえに思わず淀川長治先生まで出してきて、
「コワイデスネー」と言わせる監督のこの仕掛け。
きらいじゃないけど、コレ、見た当時、怒った人も居た予感がしますw



こんな血まみれの悲劇をどう見てもまだ子供なピーターが演じるんですもの。
確かにセンセーショナルですよね。