山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

はい。劇場で見そびれてた大好きなアン・リー監督のアカデミー賞受賞(監督賞、作曲賞、撮影賞、視覚効果賞)作品「ライフ・オブ・パイ」ですよー。
レンタルで108円になってたので早速、借りてきました。

パイはトラの名前かと思ったら、トラの名前は「リチャード・パーカー」なんてイッチョマエのイギリス人みたいな名前なんですな。
パイはトラと一緒に漂流するはめになった少年の名前。
本当はフランス語の優雅な名前なのに、たまたま現地ヒンディー語?の「立ちション」と似た発音だったために自らを「パイ(Π)と呼んで」と振れ回るわけですね。

少年の両親は動物園を経営してたのに、市の補助が望めなくなり困窮し、自分たちのものである動物たちを売り払って移住する事になります。
日本の船に乗り、一路アメリカ大陸を目指す少年一家。
ところがマリアナ海溝近くで大嵐に遭い船は沈没。
少年はたった一人で救命ボートに数頭の動物とともに大海原に投げ出され、漂流が始まるのです。

ここでワシが一番関心したのは映像の美しさもさることながら、徹底したリアリティのあるサバイバル術の数々ですよ。
実際に大西洋を76日間漂流した経験のある人をアドバイザーに迎えてそのあたりはものすごくこだわったようですね。

なのでこのファンタジックで美しくも恐ろしいお話にものすごい説得力が生まれます。
荒れ狂うかと思えば凪いで鏡のように静まり返る海。
神秘と驚きに満ちた海でたったふたつ、燃える命のトラと少年。

様々な冒険の果てに少年はトラをある程度は手懐ける?術を得ます(が、「最低食べらない」という程度)
冒険の果てにたどり着いた地で。
トラは振り返りもせずジャングルに消えてゆくのですが、このラストが意味するものとは。

劇中最後に驚愕の真実が明かされますが…
確かにこっちの方が筋が通ります。
でも、人々が求める物語はトラと少年の方なんですよね。

でも、トラは少年の分身であり、生死ギリギリのラインで現れる野生とか生命の知恵とでも言うべきもので。
それがジャングルに消えていくということは_おそらくは文明社会の中では、もう二度と会えないという事を意味しているんでしょうね。

なんとも言えない、惜別の悲しみと、少年時代のイノセントさが消え失せたことに対する痛みのようなものが味わえる。
不思議な読後感(映画だけどw)であります。
この映画をアン・リー御大が撮ってくれて良かった。
シミジミとそれを喜ぶワシでありました。