山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

止まっているおじいさん伝説

ワシと娘たちの間で「のみ」有名なおじいさんがおられます。
その名を「止まっているおじいさん」
なんで「止まっている」のか?と言うと、そのおじいさんを見るときはいつもフルフェイスヘルメットで原付スクーターに乗ってられるのですが、あまりにもそのスピードが遅くて、「止まっているようにみえる」ほどなんですね。

よく、ものの喩えで「ハエが止まるぜ」と言う表現がございますが。
このおじいさんのスクーターこそ、まさにその通り!
時速2〜3キロで走っておられます。
「そんなスピードでよくぞ倒れないな…」と思うほどのスピードです。
物理の力に逆らっておられます(ように見える)

そのおじいさんの存在に気がついたのは、初号機が高校生の頃?でしょうか(2008年頃?)
冬の早朝、夜明け前の真っ暗な道の真ん中で止まっている人が居たのでびっくりしたんですね。
「何!?」と目を凝らすと、止まっているんじゃない。
止まっているようにみえるほどのゆっくりなスピードでセンターラインの上(!!)を走っているおじいさんが居たんですよ。

「うわー、危ないー」と言いつつ追い越して行ったのですが。
それからほぼ毎朝、その時間に見かけるようになりました。

んで。
その後、初号機の駅までの送り迎えもなくなって、そのおじいさんを見かけることも無かったのですが。
ワシが仕事から帰っている道の途中、珍しく車が渋滞しておりました。
「こんな時間にこの道が渋滞って珍しい」
と、前を見やると、
なんと、その「止まっているおじいさん」が例の超スロースピードで走っておられました!��(゚Д゚)ガーン

止まっているおじいさん、以前は早朝だったのに今は夕方に出現するんだ…」

と思ってそれはその時に終わった話だったのです。
そして、この春から弐号機が高校に通い始めて、早朝の駅まで送る仕事が出来たのですが…
やっぱり早朝、暗闇の中、この止まっているおじいさんはやっぱりスクーターで走り(止まり?)回ってらっしゃるんですね。
「このおじいさん、何処に向かっているんだろう?」
とワシがポツリと漏らしますと、弐号機が、
「このおじいさん、ワタシが中学校から帰ってる時間にもよく出没してて、やっぱり路上で止まってたよ」
とか言うではありませんか。
弐号機が中学校から帰ってくる時間と言えば…16時とか17時?

つまり、あのおじいさんは早朝から夕方までひたすら走り回っているらしいのです。
「何のために!?」
想像の翼が広がりんぐぱぁぁ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゚゚・*

あのおじいさんはどうやら山の周囲を一日中グルグル回っているらしい。
あのおじいさんのスクーターのスピードで山の周囲を回るとなると、一周まわるのに3時間はかかりそう。
と、なると一日には5周回るのがせいぜいではないかしら?
一日5周回って365日続けたとして、1825周。
2008年から走ってたとして、6年で10950周。

「なんかの願掛けかしら?」とワシが言うと、弐号機が、
「何をそんなに必死に願掛けするのよ?」と言うので、
「…10万回周って死者をよみがえらせるとか…」

多分、本当は徘徊老人のスクーター版なんでしょうけど。
あの熱心さにはそんな秘密でもあるんじゃないかと思わせるものが有りますね。

先日も、早朝走ってたら、走っているコースに止まっているおじいさんが現れました。
「あ。おじいさん…」
と思って見てたら、前後の脈絡も何もなしに、突然センターラインの上でスクーターを止めて。
背後を振り返ってシミジミとしばらくの間、後ろの風景を凝視なさっておられました。

「地獄の悪鬼が追い付いて来てないかどうか確かめているのね…」
と一人納得するワシ。