山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

入院ライフ 8日目〜14日目

ところがある朝、起き上がった途端に手術跡周辺に激痛が走って息が出来なくなるくらいの痛みを感じた。
「あ?あれ??何かヘン??」
と思ったが。傷跡周辺のみならず、何故か痛みは肋骨の方まで広がっている。
「なんかオカシイ?」と思いつつもそのウチに寒気がしてきたので、毛布をかぶって昼間なのにこんこんと寝てしまう。

あれほど美味しくいただいていた病院の粗食も全然美味しく感じられない。
白飯が喉に引っかかる。
おかずの油分が気持ち悪くて食べられないのだ。

看護師さんが不審がって、「大丈夫ですか?」と熱を図ると、39.4℃!!
ぎゃ〜〜、ワシの人生最高沸点!?
こんなに体温が上がったのは3歳の時に「麻しん」に罹ったとき以来の筈…
とりあえず、解熱剤をもらうが一向に熱が下がらない。

その翌日、「ドレーンを抜いてみようか?」という流れになり、担当医、執刀医立会いのもとドレーンを抜管。
すると、手術跡と肋骨の痛みが嘘のように軽減する。

ソレまでは診察台に横になるのにも痛みに耐えて、歯を食いしばりながらジワジワとしか横になれなかったのに。
抜管したとたん、担当医に片手を持ってもらって、「すっ」と腹筋だけで起き上がることができた。
担当医(渡辺いっけい似のまつげバサバサ系ハンサム)が、「えっ?」と素っ頓狂な声を上げる。
ワシ、来た時とは別のように軽い足取りで病室に帰る。

血液検査の結果、どうやら手術中に細菌(皮膚の常在菌)に感染したらしい事が判明。
高熱はコレが原因によるものらしい。
それでこの日から朝と夜の抗生剤点滴作戦が始まる。
朝の9時と夜の9時。
一日に2回、1時間かけて抗生剤を点滴するのだ。

毎日同じ場所に点滴するので左腕の肘の内側の血管がスゴイことになりつつの、生まれて初めてテープにかぶれたり(今までそんなにテープを地肌に装着する機会も無かったので)したものの。
薬の効果は抜群で、熱はすぐに出なくなり、傷口の痛みも日に日に薄らいでいったのでした。

傷口の痛みといえば、さすがに手術当日は傷口が痛かったのですが、夫がベッドのそばに来てくれて、ずーっとワシのカラダを撫でさすってくれてくれていたのです。
コレはとても効き目がありましたね。
傷口周辺がじんわりと気持ちよくなって、思わずスースーと寝息を立てて寝ちゃったほどでしたから(^^;

「ああ、ワシは本当にこの男が心から好きなんだなあ」と再認識しましたw

ま、そんな風に点滴は打っているものの、体調も随分戻ってきたので、
「どれどれどれほど体力が落ちているか試してみようかな?」という気を起こすワシ。
朝食後、おいしいコーヒーが飲みたくなったので、1Fにある売店まで買出しに行ったついでに、帰りは階段で7Fまで歩いて戻ってみましたw

するとさすがに(^^;5Fで息切れして30秒ほど呼吸を整えてから、無事、7Fまで生還することが出来ました。
ほぼ寝たきりだったくせに急に階段登りなんかするもんだから、直後からフクラハギの筋肉がコリッコリになってしまい、さすがに反省。
ストレッチやスクワットからジワジワと体力を戻すことに決めました。

ワシが点滴作戦ですっかり入院生活が長引いている間に、となりのベッドのヨウコちゃん(投薬治療が奇跡のように効果が出た)とお向かいのベッドのタカコちゃんが退院。
毎日大声でゲラゲラ笑って楽しい病室だったのに、ついに苦労人のミヨコちゃん(金美齢さん似の美女)とワシの差し向かい二人部屋になってしまう。

「寂しくなりましたねえ」と言いつつも女二人、やっぱりおしゃべりが絶えることはなく(苦笑)大声でガハハ笑いをかましては、看護師さんに、「この部屋はいつも楽しそうで…」と言われつつドアを締め切られたり(ーー;しておりました。

そんな中、抗生剤の効き目で熱の問題も痛みの問題も随分解決し、血液検査の結果も平常値に戻ったので担当医から「退院できますよ」と告げられるワシ。
嬉しいような寂しいような。

想像では病院とは陰気な場所で粗末な食事を食べて、毎日お通夜のような状態で過ごすものだと思っていたのに。
そしてソコでの生活なんて、ワシ、三日で音を上げるとばかり思っていたのに。

現実の入院生活は、実はガン病棟の入院患者さんたちは前向きでファンキーな人が多くて、とても楽しかったですね。
「余命がどれほどあるかもワカラナイ」というのは健康な人間も同じなのに、がん患者になるとそのあたりの自覚具合がより切実になるらしく。
「毎日を悔いのないように生きて行こう」「前向きに生きよう」「人に親切にしよう」「言いたいことを言おう」「残り少ない命なら、せめて何かしら人様の役に立ちたい」と思うものらしく。
なんか、みんなむき出しの人間性が素敵でとても気持ちのいい方々でしたね。

「末期がん患者で船を仕立てて竹島を占領しに行く計画」まで持ち上がってりして毎日爆笑。
全員が偶然にもボーダー柄のパジャマを着ていた日には「シマシマ団」が結成されたりw
実に毎日、エキサイティングで楽しい日々でした。

退院の前日の夜には、「もう最後だから」とまたぞろレトルトくんがふらりとお見舞いに来てくれて、ワシ、歓喜
「よくぞ来た!勇者レトルトよ!!」とまるでDQの教会の神父さんのようなことを言うですよw
ミヨコちゃんも大喜び。
若い人が病室に来ると明るくなっていいよね(^^;

かくしてワシの入院生活は14日間にも及び、「ひえ〜〜入院費用おいくら?」とビクビクしていたのに、会計から上がってきた請求書に目が飛び出すワシ。
内視鏡手術、様々な検査、抗生剤による治療、毎日の食事などなど、14日間の入院生活まるごとの料金の総額は…

4万8千円でしたw

ビーバ、日本の医療制度!!
ワシ、がん保険焼け太りー!!!