山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

二枚のベスト盤を斬る!その4

つまり、当時(ストカメに出会った当時)のワシとは。
心底、音楽に絶望してて。
「この世では魔法なんて起きないよ」
と拗ねた目をして大人らしい達観を決め込んでいた普通の大人だったんですよ。

カッコイイミュージシャンは、実は「音楽なんかより楽して儲ける仕事」を血眼で探しているような人間のクズで。
毛も生えてないような子供が好きとか、変態的な嗜好の持ち主で。
人間の中身としては最下層。
「俺らの音楽なんかに本気で夢中になってお金払ってる奴はバカで」とファンを見下してて。
ライヴだって、全ては脚本の上に演出まみれで出来上がってて。
アンコールだってアルのがお約束。でも、二度目は無しで。

全てはデタラメで誰かの都合で作り上げられてて。
本当に心から興奮する、自分の魂を揺さぶってくれる、作り手と受け手の間で本気で魂のやりとりが出来るような、そんな音楽は純粋な子供時代だけに存在するモノであって。
大人になって汚れてしまったワシには、もう用無しでしかなく、この世には存在しないものなのだ。と__思ってましたね。

だから、最初ピロウズの事も、そんな人たちの仲間なんだろうと。同類なんだろうと思っていたんですね(今までそうじゃなかったバンドって、ほぼ、皆無だったので)
「音楽は良いけど、作り手の個人のこととかあまり興味を持っても、知ってしまうと失望して音楽まで嫌いになるだけだから、近づかないようにしていよう」
と「音楽だけのおつきあいにしておこう」と、思っていたんですね。

もう、これ以上、音楽に絶望するのがイヤだったから。
コレがギリギリの選択だったんですよ、大人になったワシの。

所が。
「やっぱり、ライヴを見ないとそのバンドの本質って判らないから」
と気軽な感じで。でも念願だったピロウズのライヴに行ってみて。
この「ストレンジカメレオン」を演奏する姿を見て。

ワシは自分の過ちに気がついたんですね。

「この人は本気でコレを歌っていたのか!?」
とハンマーで後頭部を殴られた気持ちでした。
この圧倒的な孤独。
それを全て飲み込む凛々しさ。

これはまさに彼の魂から滲み出た血の結晶であったのだと。初めて気がついたのです。

感動のあまり、その場で仁王立ちのママで声を上げて号泣して仕舞いましたよ。
「こんな凄いバンドが居たなんて!」

その血の叫びがちゃんと記録されています>新録盤