山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

我慢できないワシ

髪の毛を切ろうと、飛び込みで美容院に入る。
受付にも人がいない。
記帳するノートが広げておかれており、「こちらにカタカナでお名前をご記入下さい」と書いてあった。

ノートに名字を書き込んで「お店の人は?」と見渡すと、奥から痩せた男性の美容師が顔を覗かせて、
「いらっしゃいませ、そちらに腰かけてお待ち下さい」
と言う。

鏡の前にカウンター席があり、そこで待つようになっているらしい。

鏡の真ん前に座って待つほどナルシストではないので、鏡と鏡の間のスペースにいすを持って行って、ビッグコミック(なんてものが何故おいてあるのだ?美容院に??あ、さっきの美容師さんの私物か??)をパラパラとめくって読む。

先客は二人いるらしく、ついたての向こう側なので話し声しか聞こえてこない。
なんだかドーでもいい知り合いの噂をしている。
「こんな話題を美容院でやるのってどーよ?」
かといって、なじみの美容師さんといきなりディープな話をしてしまうワシもアレだが。

ビッグコミックの「山口六平太」はやっぱり面白くなくて。
昔はあまりの嫌いさ故に、絵を目にするのも「汚らわしい」と思っていたが、大人になったぞ、ワシ。
ちゃんと(我慢して)最後まで読んでみた。

何処が嫌いって、「自分は平凡な見た目だけど中身は特別」ってコンセプトが嫌いなんだよ。
仕事が出来ないのも見た目が冴えないのも、「隠れデビルマン」の中身で癒される___ってこれって凄くみっともない根性と思いません事?

「ま、おじさんの慰撫作品って事か」
と冷たい視線で突き放す。

ビッグコミック、隅から隅まで全部読んだのに、ココまでの間、美容師さん誰も現れず。
奥から聞こえてくるお客との会話の調子では、まだまだ時間がかかりそう。

「えーっと。そこまでヒマじゃないんだけどな」
と時計を見ると、もう20分待っていた。

「あ、ダメだ。年のせいか辛抱が出来ないぞ」

黙って席を立ち、そのまま店を出てきてしまったw
そのまま20メートルほど歩いて、「千円カット」の店に飛び込む。

3分ほど待つと休憩時間が終わった美容師さんが出てきて、
「どんな風にしましょ?」と訊いてくれたので、
「ばりっと、短いマッシュルームカットにしてください」
とお願いする。

カットは20分で終わり、細部の詰めが甘い部分は自分で家に帰ってからカットし直した。
満足。