山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「WHITE INCARNATION」賛

「その絶望の原因はそれぞれ中と外にあり非常に対照的ではありますが」
と、昨日、何気に書きましたが、勿論、どっちも「バンドの危機」に直面していたというアレの事です。

「WHITE INCARNATION」では「念願のロンドンレコーディングだったのに、酷い目に遭っちゃった」事件。

「サンドイッチ買ってきて」と真鍋代表に頼まれて、さわお七面鳥のモモ焼きを買ってきた時の話です(「(英語が苦手な)山中に頼んだオレが悪かった」と後々反省なさっていましたが)

当時レコーディングと同時進行でイギリスで撮影したPVも残っていますが(「彼女はシスター」)、そんなさわお個人の内側の問題を他人に気づかせるほど酷い内容ではないし。
むしろ、若々しい雰囲気でちゃんと演技してて。ヴォーカルトラックが「アレ」な事を除けば、普通に良く出来たPVですよ。

おそらく、帰国直後「バンドをやめたい」とさわおが言い出した時はメンバー全員青天の霹靂で驚いたでしょうねえ。
「これからって時に何を言い出すんだ!?」とね。
制作費だってかかっているのに困った男だw

このロンドンレコーディングは未だに色々恨み百万年のようですが、今聴いてみるとなかなか良く出来てて。
ワシは嫌いじゃないですよ。
エコーのかかった大げさな録音も当時のUKっぽい感じで。
ピロウズのキャラクターによく合ってます。

ギターの音も綺麗ですし、ドラムへの演出はかなり過剰ですが(というか、「ひいき」にされている気がする)
まあ、ヴォーカルがダメなバンドの録音としてはコレで良かったのかも?__という気もします。

そして何よりもココで書いておきたいのは、楽曲の秀逸さです。
ある意味、ピロウズの本質がよく出ているアルバムで。
おそらくは、当時の山中さわお「渾身の作品」だったんだろうなと想像できます。

「世間にソングライターとして認められたい」という気持ちがパンパンにまで膨らんだ__意欲作野心作で。
それに応えようとアレンジもとても気が利いている&繊細にしてお洒落。
若々しい瑞々しい才能が眩いばかりです。

でもソレがもう一歩踏み込んで、絶望の中にあってこそ更に光り輝くモノであったのだとわかるのは、「Please Mr.Lostman」の出現を待たなければなりません。
でも、「WHITE INCARNATION」
コレはコレで名作です。
「Please Mr.Lostman」をお好きな方は、是非。