山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「やくざ絶唱」(1970)

すっかり映画を見なくなったワシ(^^;
久しぶりに図書館からビデオなんか借りてきて、見ましたよ映画を!
久しぶりの映画、お題はコレだー!↓

「やくざ絶唱」(1970)

監督 増村保造
脚本 池田一朗
原作 黒岩重吾
撮影 小林節
美術 矢野友久
音楽 林光
出演 勝新太郎 / 大谷直子 / 田村正和 / 川津祐介 / 太地喜和子 / 荒木道子 / 加藤嘉

今まで色々と増村作品を見てきたわけですが。
コレも「ヤクザ映画」の仮面を被った、「純然たる増村映画」でしたね。

増村作品に共通して流れるテーマ、「女性VS男性」
この対立しあいながらも、愛し合ってしまうという皮肉な運命を持つ者達に対するマエストロの視線が、やっぱり面白かったですね。
これと同じようなテーマで映画を撮った監督にヴィットリオ・デ・シーカが居ると思うのですが(他の人はどう思っているかなんて知らん&ワシの偏見なので、「違っているぞ!」という苦情は一切受け付けません!)
特に「昨日・今日・明日」(1963)の「今日」編にマエストロ増村は非常な影響を受けたのではないか?

「女性が人間として自立するときに、一体何が起きてしまうのか?」
社会通念との軋轢、父権社会との軋轢。
「強い女」の行く手をを阻むモノがこれでもかこれでもかと手を変え品を変えて次々に繰り出されます。

コレが増村監督が掲げた、彼の作品を貫く大きなテーマであると感じます(それこそ、コメディの「青空娘」にすらそれを感じます)
今作「やくざ絶唱」に於いては、その「阻むモノ」が「愛」であるというのが、実に厄介。

「はー、この話の落としどころを一体、ドコに持っていくつもりなの?マエストロ??」と興味津々で見ていたのですが、うーむ、さすがマエストロ東大卒!w
実に賢い&万人も納得!!(なのか?ひょっとしたら、ワシだけかもー)な落としどころで感心しましたねえ。

エストロ増村が「兵隊やくざ」で勝新を起用したときに、発明した「勝新=生まれっぱなしの天然の天使」というキャラクター。
それがこの映画でも遺憾なく発揮されます。

勝新は純白のスーツでラスト、死地に向かいます。
この「宗教的な愛」というモノが不在の国「日本」で、彼は彼の無償の愛を体現するために自分の身を捧げ殉教するのです。
「ヤクザ映画」という仮面を被った宗教映画ですね、コレは。