山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

「殯(もがり)の森」 感想備忘録

シネスケが落ちているみたいなので、忘れないうちに感想を書いて置こう。

☆=4

「これほどロマンチックな男の主人公は邦画初かもしれない」

以下ネタバレ↓
















たまたま気がついたらNHKのハイヴィジョンで放映していた(早っ!!)ので、録画して翌日観賞。
いやー、面白かった。こんなに面白い映画が撮れる監督とは知らなかった。ゴメンネ>河瀬監督

この「幼い子を失った若い母親」と「若くして妻を失った老人(と言うにはまだ若い)」が出会えば、それはなんかしらお互いの空洞を埋めるように惹き合うのは当然の事で。

非常に自然な流れで二人はお互いの、死んでしまった片割れとの楽しかった思い出を反芻するかのように茶畑で転げ回って笑い合う。
このシーンでは不覚にも涙してしまった。

家族に死人を出した事がある人なら、きっと共感できるシーンだと思う。
河瀬尚美、子供を産んで本当にヨカッタな。
子供を産まなければ判らない事__というのは実際に存在するのだ。
それを実感として知ったという事なんだろう>この茶畑シーンでの説得力

伸び始めた稲の上を吹き渡る風のシーンも素晴らしい。
夏草の匂いと、神の存在までも感じさせてくれるようなジャストなタイミングで吹くシーンはまさに「映画の魔法の一瞬」である。

「この映画はいい映画だ」と予感させてくれる瞬間である。

森に人は分け入り、自分の無意識化に潜り、神に出会い、生命の根源に触れる。
今までにも世界で何本かの映画が表現し、既に名作が何本も撮られているという、そんなテーマだというのに、河瀬監督は日本人らしいアプローチでもってその死生観も織り交ぜて新しい視点を提示してくれた。

非常に嬉しい&誇らしいですね!(<上から目線?)

「こんな老後なら、死に方なら文句ないなあ」と素直に思える作品である。
ワシもあんな風に夫から西瓜を食べさせてもらいたいものだ。