山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

タイニー・ボート 三番勝負 第五回

《2004年発売 6曲入りミニアルバム「TURN BACK」収録「タイニー・ボート」》
ピロウズは2004年にバンド結成15周年記念事業の一環として、
「過去の曲を再レコーディングする」という暴挙に出た。
一応コレが今現在、最も手に入りやすくて簡単に聞く事が出来る「タイニー・ボート」である。
(シングルバージョンは1stPV集DVD「We have a theme song」に収録されているし、
アコースティックバージョンは15周年記念ドキュメンタリーDVD「Walkin' on the spiral」
にオマケとして収録されている)

普通だったら、こんな大昔の曲を再レコーディングなんて事すれば、
「あー、才能も情熱も枯れたって訳ね」という見方をされるのが関の山で、実際に今までも
色んなバンドや歌手がやってのけては見事、
「やっぱりオリジナルを越える事って殆ど不可能なのねー」というレスポンスが
帰って来るのが普通で、その後その人の才能や人気が転落の一途を辿っていったという前例が
あまりにも多過ぎる「かなり危険な道」である。

「なんでそんな事するんだろう?」と当時は不思議な気がしたが、
この「タイニー・ボート」事件を知って納得。
つまり、本人達は「自分の過去に落とし前をつけたい」のだなと感じた。

「あの時、今にして思えば不純な気持ちで_当時はヨカレと思ったのに_結果、散々な事にしてしまった曲」
「曲に罪は無いのに、勝手に封印しちゃった曲」
「今のバンド力をもってすれば、今の声で今の音で演奏すれば、絶対説得力が上がるはずな曲」
とかいう思いがあったんじゃなかろうかと勝手に推測している。
そしてソレは実際、その通りになってしまった。

実はこの再レコーディングされた「タイニー・ボート」をフルコーラス、大音響で聴いた時、
ワシ、感動のあまり泣いたんだよね。恥ずかしいけど。

どんな歌かは知っているし、元がどんな曲だったのかもよーく知っている曲なのに。
感動のあまり、涙がボロボロ出たんですよ。
あのひ弱で「毒にも薬にもナラン音」がまるっきり生まれ変わっていた。
あの暖かで優しい綺麗な音が、力強く確信に満ちた熱い音になっていた。
リズムは逞しく、歩くスピードで刻まれ、恋に高まる心臓の鼓動のように鳴り響く。
バンドの上に流れた8年という歳月が、実に尊いものだったんだと教えられた。