山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

穴を掘り続ける男

いわゆる「ゴミ屋敷」というのが最近は世間でも知られるようになって、テレビ等で報道されているが…アレって昔からあったよね?
ちょっと偏屈(?)な変わり者のジイサンが、ゴミでバリケードを築いて、家屋敷を砦状態にして守っているってのは、「町内に一軒はある異様な風景」だった筈だ(まさか、コレは熊本だけの現象では無かった筈だ)
すると、そのゴミ屋敷の住人というのは、漏れなく「他人に裏切られたor騙された経験がある人」だった気がする。

ワシが中学生の頃、学校の北側にそういう家があって、「スゴイから一回、見てご覧よ」と友達に言われ、帰り道に大回りしてその家を見物に行った事がある<昔から物見高い。
するとその問題の件の家は、まあ、家自体は普通の様子なのだが、家の周囲に古い冷蔵庫とかが意味もなく積んであって、裏庭には「広大」と言ってもいいような大穴が掘られていた。
噂では毎日そこの家の主はせっせと穴掘りに精を出していて、「穴を掘り続ける事が生き甲斐」な様子だったらしい。
しかもその主は、「男と逃げた女房をココに埋めるんだ」と主張しているらしかった。

ワシが見学に行った日はその家の主はたまたま留守で(家の中にいたのか?)、穴だけを見学して「ひぇ??、怖いねえ」と友達と言いつつ帰ってきたのだが、その印象は、30年経った今でも忘れる事が出来ない。

今にして思えば(テレビで「またも発見ゴミ屋敷!近所の住民大迷惑!!」みたいな報道等を見ながら思い出してみれば)、「やっぱり裏切られた事がある人って自分を守る為のバリケードが必要なんだなあ」という事に気づかされる。
もう自分を敵から守る_対象はなんでも良いの。「全世界から守る」と言ってもいいんだと思う。
「外の世界はみんな敵」「外界の人間は自分をだまし、傷つけ、自分のお金や財産をむしり取って行ってしまうもの」って感覚なんだろうな。と、想像してみる。
なんともこの、最近寒くなってきた季節柄、想像しただけで身も凍えそうな考え方だが、やはり、「義弟もそうだったんだろうな」と思いを巡らせる。

潔癖症だったので、異様に整理整頓された室内であったが、とにかくゴミの物量が凄まじかった。
ゴミを片づけていたらここ20年分の薬の処方せん(コレもキッチリ分類され四角くまとめられていた)やら請求書に混じって、裁判の記録も出てきた。
義弟が巻き込まれた詐欺事件の裁判の記録であった。