山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

クルちゃんの災難(熊本帰省日記)・2

*二日目
サイトー家全員「クルちゃぁ?ん!」と近所を呼ばわる。
しかし、見つからない。
「クルがいない?」とオロオロする。

実家父が突然、「猫はたいてい遠くに捨てても帰ってくる」と、言い出す。
「ん?ナンの話?」と見ると、いきなり、「実は」と告白し始めた。

「チョン(=ワシが高校生の時飼っていた史上最強の頭脳と肉体を持った雄の黒猫)をホンダのテストコースまで(実家から6?7キロ)捨てに行ったことがあるが、一週間くらいかかりながら、ボロボロになって帰って来た。悪かった。だから、その後は死ぬまでウチで看取ってやった」

一週間くらい行方不明になったことがあった。
でもチョンは近所一帯のボス猫だったし、「ボスにはそーいうコト(家に帰りたくても帰れない)が起きる事情もあろう」としか当時は思っていなかった。
20数年後にそんな「秘密」が明かされようとは。
「猫好き」のダンナは「むっ」としていた。
ダンナは晩年のチョンを知っている。

夜になり、ボイスの散歩から帰ってきたダンナが、「クルを見つけた!」と家に飛び込んできた。
どこからともなく、クルの声がするので近づいていったら、隣家の閉められたシャッターの中から声が聞こえると言う。
どうやら、隣家の倉庫の中で遊んで(昼寝?)いるウチに閉じこめられたらしいのだ。
慌てて全員で(実家両親まで)隣家の倉庫前にダッシュ
隣家はお留守らしく、誰もいない。
コレが倉庫というには立派な「土蔵作り」の倉庫で、白壁+高い位置の小さな窓+シャッターという作り。
ダンナが鍵のかかったシャッターを少し持ち上げて、「クルー!」と声を掛けると「にゃー」と返事がある。
「あー、イタ!生きてるー!!」
シャッターの隙間から手を入れると、クルの前足とマズルに触れた。
せちたろー、「よかったー!!」と言って泣き崩れる。

慌てて実家にとってかえし、餌と水を持って来て、シャッターの隙間からクルに差し入れ。
隣家の玄関に張り紙(猫が閉じこめられています。帰宅されたら電話下さい)しておく。
隣家の「田中さん」ちは深夜12時にようやく帰宅。
シャッターを開けて貰い、無事、クルは救出された。
「ハーレーを出し入れする時にしかココの開け閉めをしないので、気がつきませんでした」と田中さん談。
「土蔵作り」の倉庫は涼しかったらしく、クルは30時間以上閉じこめられていたのに脱水の症状もナシ。
不幸中の幸いだった。