山麓日記帳

全ては消えゆく、雨の中の涙のように

(映画の感想覚え書き)「股旅」・本家日記は下↓

萩原健一主演、市川昆監督作。脚本は谷川俊太郎と市川昆。
とにかく、渡世人の所作、仁義の切り方、礼儀作法、倫理観(?)が面白い。
今見るとほとんど「異次元か宇宙人」のやり方。
純粋に文化人類学的に興味深い。

そして、時代的なモノもあるせいか(1972年前後か?)、日本映画なのに「アメリカン・ニュー・シネマ」の匂いがする。
明日に向かって撃て」とか、「イージー・ライダー」とか。そんな匂い。

農村の共同体から離れ、自由を求めて渡世人になったはずが、渡世人の世界も規律が厳しくて「ヒドイ目に遭っちゃう」話。
しかし、青春映画としてもとても良くできており、公開当時、きっとヒッピーとかフーテンと言われた人たちにも共感を持って迎えられたのではナイか?

市川昆の「若い男の色気」をすくい取る感性は見事で、若い男の肉体の躍動に「オバチャンはウットリ」してしまう。
時期的に「木枯らし紋次郎」と同時期か?
殺陣も「木枯らし紋次郎」と同じで、「必殺ぶん回し殺法」である。

その辺のリアルさ、所作等の歴史的考証の確かさのオカゲか、実に「70年代的青春モノ」なのに、妙な共感や一体感を感じる。
「時代のイキオイ」と言えば、確かにそうなのだろうが、この救いのない話を暖かく、共感を持って描いてみせる市川昆!素晴らしい!!

隠れた日本映画の名作。